やさしい商業登記教室 第16回 すべての株券を発行していない譲渡制限会社と株券廃止会社へ移行の要否


◇ 本年の9月30日までに設立された譲渡制限の定めのある株式会社がすべての株式について株券の発行をしていない場合、株券廃止会社へ移行した方が良いか否かの質問がときどきあります。資本金1,000万?2,000万円位の会社のケースです。

◇ 本年10月1日から施行された改正商法226条1項は、「会社は成立後又は新株の払込期日以後遅延なく株券を発行することを要す。ただし、株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定ある場合において株主より株券発行の請求なきときはこの限りにあらず」(原文は片仮名、句読点等なし)と既定しており、改正法の附則には何んら特別の規定は設けられていません。したがって、改正商法施行前に設立された譲渡制限会社にも、改正商法226条1項ただし書の規定が適用されます。

◇ したがって、平成16年9月30日前に設立された譲渡制限会社も株主から請求がない限り、株券を発行する必要はないというわけです。そこで、このような会社がすべての株式を発行していない場合には準株券廃止会社(すべての株式について適法に株券が発行されていない会社)に該当することになります。このような会社にあっては、株主が株式を譲渡する可能性も極めて少なく、一般的には株券不発行の定めを設けるまでもないと解されています。

◇ しかし、このような会社も、万一株式を譲渡する場合には株券を発行する必要があり、また株主から請求があれば株券を発行しなければなりません。そこで、株主が極めて少数の同族的会社の場合は、株券廃止会社へ移行する必要はありませんが、株主に家族以外の者がいる場合には、他に定款変更の機会(例えば、商号・目的の変更等)があり、その登記を要するときに、最寄りの司法書士さんに相談されてはいかがでしょうか。