やさしい商業登記教室 第43回 取締役会の決議の省略における添付書面
A 取締役会の決議の省略に関する定めを設けた定款と取締役会の決議があったものとみなされた事項に関する取締役会議事録の添付が必要です。 【解説】 株主総会の決議の省略(会社法319条)と異なり、取締役会の決議の省略について定款の定めが必要とされる理由は、取締役会が、取締役の協議と決議に基づき業務執行の決定を行うことで取締役の相互監督を前提とした適切な結論を導くことを目的とした機関であって、その協議の省略を認めることは取締役会制度の枠組みに重大な例外をもたらすものであるためとされています(相澤哲=葉玉匡美=郡谷大輔編著『論点解説 新・会社法」366頁)。 取締役会の決議の省略による変更登記を申請する場合には、当該定めの存在を証するために定款の添付が必要となります(商業登記規則61条1項)。 2. 取締役会議事録 通常の取締役会については、出席取締役等が取締役会議事録に署名義務を負いますが(会社法369条3項)、取締役会の決議の省略がなされた場合には、当然出席取締役は存在しませんから、作成される議事録に取締役等の署名義務はないということになります(会社法施行規則101条4項)。 代表取締役の選定について取締役会の決議の省略がなされた場合には、商業登記規則61条4項の規定を踏まえ、当該取締役会議事録に同意をした取締役全員が記名押印し、当該印鑑について市区町村長が作成した印鑑証明書の添付を要すると解されています(小川秀樹=相澤哲編著『通達準拠 会社法と商業登記』187頁)。ただし、再選された代表取締役が当該議事録に、いわゆる会社届印を押印している場合には、他の取締役等の記名押印は不要となります(商業登記規則61条4項ただし書)。また、当該議事録に取締役等の記名押印がない場合には、決議の省略に関する同意書に各取締役が記名押印し、当該印鑑について市区町村長が作成した印鑑証明書が添付されたときは、これに代えることができるものと解されていますので(小川秀樹=相澤哲編著『通達準拠 会社法と商業登記』187頁)、、当該同意書を添付するということになります。 3. 監査役の異議 監査役が異議を述べるかどうかは監査役の裁量に属することであり、取締役からの提案を一見すると問題がないと判断しつつも、取締役会において協議を重ねたうえで結論を出さなければその内容に対し確定的に異議がないとはいえないというような場合にも、提案に対し異議を述べることができると解されています(相澤哲=葉玉匡美=郡谷大輔編著『論点解説 新・会社法」368頁)。 提案に対して監査役が異議を述べることができる期間について明文の規定はありませんが、法律関係が不安定になることを防ぐため、実務的には、少なくとも電話やEメール等で異議がないことを確認しておくといった工夫も検討すべきではないでしょうか。なお、当該監査役の異議のないことについての証明書等を登記申請書に添付する必要はありません。 |