やさしい商業登記教室 第62回 合同会社の定款作成上の留意点(2)


合同会社の定款作成上の留意点(2)

2.社員の全部を有限責任社員とする旨の記載の方法
 持分会社の定款の記載又は記録事項を定める会社法576条1項5号は「社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別」を定款の絶対的記載又は記録事項と規定し、さらに同法4項では「設立しょうとする持分会社が合同会社である場合には、第1項5号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。」と規定しています。そこで、その記載又は記録の方法が問題になりますが、これには大別してつぎの二通りの記載または記録方法があるようです。

 (1)法務省方式
 法務省のホームページに登録されている方法は、次のとおりです。


(社員の氏名、住所、出資及び責任)
第5条 社員の氏名及び住所、出資価額並びに責任は次のとおりである。
1. 金300万円 〇県〇市〇町〇番〇号 有限責任社員 法務商事株式会社
2. 金200万円 〇県〇市〇町〇番〇号 有限責任社員 法務 一郎

 (2)商業登記ハンドブック方式
 名著の評価が高い松井信憲著「商業登記ハンドブック(第2版)」掲載(591頁以下)の方法は、次のとおりです。

(社員の氏名・住所、出資及び責任)
第5条 社員の氏名又は名称及び住所並びに出資の目的及びその価額又は評価の標準は、次のとおりである。
 一 金〇〇万円 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号 
         何某
 二 宅地(〇県〇市〇町〇丁目〇番所在、〇〇平方メートル)
   この価額金00万円
         〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号 
         株式会社P
 三 金〇〇万円 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号 
         合同会社Q
 四 〇〇USドル
   [この価額金〇〇万円]         アメリカ合衆国〇〇州〇〇市・・・
         (日本における営業所 〇県〇市・・・)
         ロバートコーポレーション
2 当会社の社員は、すべて有限責任社員とする。

 (コメント)
 いずれの方式も間違いではありませんが、会社法576条4項の「設立しょうとする持分会社が合同会社である場合には、第1項5号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。」という規定の文言から判断して、当職は、松井方式を選択します。