商業登記漫歩 平成16年8月2日号(2号)

◇ 「類似商号」とは、どのような商号かご存知でしょうか。新しく会社を設立する場合、本店を移転する場合、目的を変更する場合に、商号が類似商号に該当すると、会社の設立登記等は受理されません(商業登記法27条、24条13号)。会社を設立する場合などには、どなたもこの類似商号に戸惑ったことと思います。

◇ ところで、類似商号とは、同一市区町村内に所在し、営業の全部または一部が同じで、はっきり区別することのできない商号をいいます。つまり、類似商号といえるためには、まず、①二つの商号が同一市町村(東京都の特別区および政令指定都市にあっては各区。以下、同じ。)に所在すること、次いで、②営業目的の全部または一部が同じこと、そして、③商号がよく似ていることという三つの要件を満たす必要があります。

◇ この制度は、先きに登記をした者の「商号権」を保護すると共に商人と取引をする者が二つの商号を混同して誤認することのないよう取引相手を保護するためのものですが、商号権の範囲を同一市町内に限定することには、現在の経済活動の実態から判断して問題があるうえ、会社が多くなると、類似商号の判断を余り厳しくすると会社の設立が困難になります。
 また、商号権は、会社の営業目的によって画されますので、登記官が営業目的が同じかどうか判断し易いように、目的をより明確、より具体的に記載するよう求める傾向にあり、これが登記官と企業家のトラブルの原因にもなっています。

◇ そこで、来年制定される予定の「会社法(仮称)」では、類似商号の制度を廃止し、「同一所在地・同一商号の登記」のみを禁止することにしています。そうなりますと、新しく会社を設立する場合などには、楽になりますが、すでに設立されている会社とよく似た商号の会社が続々設立される(?)可能性があります。それを防止する方法は、残念ながら類似商号の制度を残す以外にありません。もちろん、それによって損害を受けた者は、訴訟によってそれを回復する方法はあります。事前規制から事後規制へというわけです。
 ところで、皆さんは、事前規制派ですか、それとも事後規制派ですか。(満)