商業登記漫歩 平成30年12月25日号(65号)

◇ 会員の皆様、今年1年大変お世話になりました。どうか良いお年をお迎えください。
 本年最後の商業登記漫歩です。全国15か所で開催した商業・法人登記セミナーでは、皆様に大変お世話になりました。数々のご厚情に深謝申し上げますとともに、どうか良いお年をお迎えください。
 ところで、今年度の当倶楽部の重点事業目標は、商業・法人登記のための基盤整備の推進として、①中小企業の株主名簿の整備及びその体制の確立と②定款の点検・整備作業を推進することです。皆様のご理解とご協力を重ねてお願いします。
 ①の中小企業の株主名簿の整備及びその体制の確立については、平成28年10月1日から、株主リストが添付書面となりました(商登規61条2項・3項)ので、司法書士にとって喫緊の課題です。いうまでもなく、株主名簿の作成、その後の変更手続及び本店での備置きは、会社法上の義務であり(会社法121条、125条1項)、これらの義務違反は、登記懈怠等と同様、100万円以下の過料の対象となっています(会社法976条1項7号・8号)。そこで、株式会社の設立登記の依頼を受けた場合は、たとえ株主が1人の場合でも、必ず株主名簿を作成していただきたいと考えます。なお、過去に設立登記を受任した事件についても、株主名簿を作成していない場合は、当該会社と相談して、今から株主名簿を作成されてはいかがでしょうか。特に発起人7人時代に設立した株式会社(平成3年3月31日以前に定款の認証を受けた会社)には、小職の推測では、ほとんど名義上の発起人がいます。真正な発起人も、名義貸し発起人も高齢化していますので、株主名簿整備未了の場合は、相続人との間にトラブルが発生する可能性があります。
 ②の定款の点検・整備作業の推進については、平成17年制定の会社法が施行されて既に12年が経過しました。ところが、整備法に相当数存在する(ア)「みなし規定」(整備法76条、77条等)に基づく定款の手直しが終了している会社は、せいぜい50?60%程度ではないでしょうか。特に特例有限会社(整備法5条等)は、いかがでしょうか。これらの会社の定款の手直しは司法書士の役割です。また、(イ)定款に定めなければ効力を生じない事項(旧商法161条1項、会社法608条1項参照)に関する整備も司法書士の役割です。旧商法に基づいて設立された合資会社及び合同会社の中には、持分承継の定めを設けていない会社が結構あります。旧商法に基づいて設立された合資会社、会社法に基づいて設立された合同会社の社員の死亡、合併解散に伴い、既に問題が発生しています。「相続登記はお済みですか。」と並んで「定款の手直しはお済みですか。」も必要ではないでしょうか。
◇ 平成31年の商業登記漫歩は、1月7日からスタートします。
 平成31年の商業登記漫歩は、1月7日からのスタートです。皆様、来年も元気に楽しく商業・法人登記に取り組みましょう。(神崎)