やさしい商業登記教室 第1回 商業登記制度と司法書士

A…やさしい商業登記教室主宰者
B…商業登記を愛する司法書士事務所のOL(司法書士補助者)
C…中小企業の総務担当者。目下、資格試験受験準備中

第1回 商業登記制度と司法書士

A 9月から、毎月2回程度、やさしい商業登記教室を開講します。この講座の目的は、一般企業の総務関係を担当される皆様方に、商業登記制度とこの制度を支える司法書士制度についてご理解いただくためのものです。私は、当教室主宰者兼主任講師のA、商業登記経験30年、Bさん、Cさんにはアシスタントとして参加してもらうことにしました。

  第1回は「商業登記制度と司法書士」です。

  今日は、第1回目ですから、主として講義形式で進めることにしますが、次回からは、Bさん、Cさんに問題提起をしていただきながら進めていきたいと思います。

  なお、Bさんは、何よりも誰よりも商業登記の方に魅力を感じるという司法書士事務所のOL(司法書士補助者)、Cさんは中小企業の総務担当者で、某資格試験の受験準備を始めたばかりです。

A それでは、今日のテーマである商業登記制度とは、どのような制度でしょうか。

  一般企業は、会社として、いろいろな取引をします。ところが、会社と称して取引をしながら、そのような会社が存在しなかったり、会社の代表取締役と称して取引をした者が代表取締役でなかったりしますと、取引の相手方は不測の損害を受けることになります。そこで、国家は、商業登記という制度を設けて、会社(個人として事業を営む者についても同様に取り扱うこともできます。)の商号(名前)、本店(本社の所在地)、取締役・代表取締役・監査役等の役員および資本金等を会社の登記簿という帳簿に記載して(法務局に備えた登記簿という帳簿に記載することを「登記」といいます。)、これを公開し(帳簿を見せたり、証明書を発行する。)、取引が安全かつ円滑に行われるようにしているわけです。このような制度を商業登記制度といいます。

  商業登記制度は、以上のような制度ですから、会社は、登記(会社設立の登記)をして初めて会社となり、代表取締役が変わったりした場合には、本社の所在地においては2週間以内にその登記をしない限り、取引の相手方に代表取締役が変わったことを主張することができません(商法12条)。このように、商業登記制度においては、会社に登記が義務づけられています(所定の期間内に、会社の代表者が登記の申出をしないと100万円以下の過料に処されます。)ので、各会社がスムーズに登記を完了することができるよう、国家は、司法書士という制度を設けて、会社から依頼があれば司法書士が代わって法務局に提出する書類を作成し、代理人として法務局に登記の書類(これを、登記申請書といいます。)を提出することになります(司法書士法3条)。

  なお、司法書士となるには、法務大臣の実施する試験に合格し、日本司法書士会連合会に登録しなければなりません(司法書士法6条・8条)。現実にも、法務局に提出される登記申請書のかなりの部分が司法書士によって作成されており、商業登記制度は、司法書士を抜きにして語ることはできません。

  なお、登記事務を担当する国の機関を法務局、担当するものを登記官、これらを定めた法律を商業登記法といいます。

A それでは、第1回のレッスンはこの位にして、次回のテーマは、「登記所という名の役所」です。Bさん、Cさん、ご苦労様でした。

B、C 次回もよろしくお願いします。