やさしい商業登記教室 第7回 改正商法シリーズ  小会社の取締役が社外取締役に該当する場合と、社外取締役であることの登記の要否

A…やさしい商業登記教室主宰者
B…商業登記を愛する司法書士事務所のOL(司法書士補助者)
C…中小企業の総務担当者。目下、資格試験受験準備中

第7回 小会社の取締役が社外取締役に該当する場合と、社外取締役であることの登記の要否

A 今日のやさしい商業登記教室も、前回に引き続き「改正商法シリーズ」です。
  前回もお話ししましたように、社外取締役とは、「現に業務を執行せず、過去および現在において、その会社または子会社の業務を執行する取締役、執行役または支配人その他の使用人ではない者またはなかった者」をいいます(商法188条2項7号ノ2参照)。

B 現在、司法書士が代理人となって設立する株式会社は、資本金1,000万円の会社が多いのですが、株式会社の場合、取締役が最低3名必要ですから、資本金1,000万円の株式会社の取締役の場合、名義上(名義貸し)の取締役が結構いるのではないかという気がします。資本金1,000万円の株式会社でも、取締役が今Aさんのおっしゃった社外取締役に該当する場合、「社外取締役の登記」を要するのでしょうか。

C 親会社の社員が、親会社のしかるべきポストに在籍したまま子会社の取締役に就任する場合も社外取締役に該当することが結構あるのではないでしょうか。

A 今、Bさん、Cさんの指摘した事例の場合、社外取締役の要件に該当するときは、いずれも「社外取締役の登記」を要します(商法188条2項7号ノ2)。

C しかし、社外取締役の制度は、ソニーが日産自動車のカルロス・ゴーン社長を社外取締役に迎えたように、大会社やみなし大会社において、企業統治の実行性を確保するために導入された制度ではないでしょうか。資本金1,000万円の株式会社は想定外ではないでしょうか。

B 前回取り上げられた委員会等設置会社において、社外取締役が必置とされていることから考えても、Cさんのご意見に賛成ですが、ただ、社外取締役の責任免除(商法266条12項)または責任限定契約(商法266条19項)のことを考えますと、小会社に適用してもよいという気がしますが……。

A 司法書士のみなさん、特に地方都市に事務所を設けている司法書士の皆さんと意見交換をするたびに、今、Cさんの述べたようなご意見を耳にします。しかし、反面、Bさんの述べたようなメリットもあります。ともあれ、商法で規定されている以上、たとえ小会社であっても「社外取締役」の登記を要します。

B 登記をしないと、過料の対象になるのですか。

A そうです。いろいろご意見はあっても、司法書士の皆さんは、十分ご留意されて、設立登記や役員変更登記を受託した場合には、社外取締役の制度が小会社にも適用がある旨、しかるべきアドヴァイスをする必要があると考えます。
  今日はこの位にして、次回は「100%現物出資による会社の設立手続」を取り上げてみましょう。