やさしい商業登記教室 第10回 株式の種類(その1)

A…やさしい商業登記教室主宰者
B…商業登記を愛する司法書士事務所のOL(司法書士補助者)
C…中小企業の総務担当者。目下、資格試験受験準備中

第10回 株式の種類(その1)

A 今回のテーマは、「株式の種類」です。

C 額面株式は廃止されましたが、それ以外に株式に種類があるのですか。

A 平成13年10月1日から施行された商法の改正により額面株式はすべて無額面株式となりましたが、株式の額面、無額面の別は、株式の種類ではありません。商法222条1項は、会社は、次の事項について内容の異なる数種の株式を発行することができると規定していますので、これが、「株式の種類」というわけです。学者は、「数種の株式」とか「種類株」と称しています。

  1、利益または利息の配当
  2、残余財産の分配
  3、株式の買受
  4、利益をもってする株式の消却
  5、株主総会において議決権を行使することができる事項
  6、その種類の株主総会における取締役または監査役の選任

B 株式の種類は、そんなにあるのですか。

A そうですね。平成13年に商法が改正されるまでは、株式の種類は、前記の1、2および4のみで、これらの株式については、新株の引受け、株式の併合もしくは消却または合併による株式の割当てに関し、株式の種類に従い格別の定めをすることができると規定されていました。

C そうしますと、残りの種類の株式は改正によって追加されたわけですか。

A そうです。3は平成13年改正(平成13年10月1日から施行)、5は平成13年改正(平成14年4月1日施行)、6は平成14年改正(平成15年4月1日施行)によってそれぞれ新設されたものです。しかも、これらは、いずれも混合して発行することができます。

B 私のところの事務所では、私が勤務するようになって3年になりますが、まだ1件も登記をしたことがありませんが、そんなに利用されているのですか…。

A そうですね。改正前においては、それ程利用されているとは言えなかったと思います。一部の大手企業において、1の利益配当優先株と4の償還株式を一括して発行する事例はいくつかあったと思います。しかし、今後は、企業の資金調達が銀行から融資を受ける間接金融から企業が直接市場から資金を調達する直接金融へシフトしていく中で、種類株の発行は増加していくものと思われます。商法の改正も、企業がいろいろな種類の株式を発行して直接市場から資金を調達することを支援するためのものです。以上の種類株を一覧表にすると、次のようになります。⑤?1、⑦、⑧、および⑨については、各種類株の内容と併せて、次回に説明することにして、今日は、この程度で終りにしましょう。

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