やさしい商業登記教室 第36回 補欠の意義(1)


1.たとえば、定款に「当会社に取締役6名以内を置く。」、「当会社に監査役2名以内を置く。」と定め、補欠取締役・監査役について任期短縮の定めがある会社において、現に取締役5名、監査役2名が選任されている場合、取締役1名および監査役1名が辞任し、その後任者を補欠として選任したときに、その任期が前任者の残りの任期になるかどうかという問題がある。

2.ところで、会社法329条2項は「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くことになるときに備えて補欠の役員を選任することができる。」と規定し、同法336条3項は「定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。」と規定していることから、立案担当者は、補欠の意義を「役員が欠けた場合又は会社法若しくは定款で定めた役員の員数を欠くことになるとき」に退任した役員の後任として就任した役員を補欠役員と解しているように思われる(相澤外「論点・解説新会社法」305頁以下)。

3.そうすると、実務上事例の多い1の事例は、補欠に該当しないことになるが、取締役の場合は、後任者選任の株主総会決議において、その任期を前任者の残存任期である旨を定め(会社法332条1項ただし書)、議事録に明記しておけばよいが、監査役の場合はそのような取扱いができないことになる。

4.いずれにせよ、これが問題になるのは、いわゆる補欠役員が退任する時であり、その場合の退任を証する書面の問題である。(この稿つづく)