やさしい商業登記教室 第45回 商人に該当する一般社団法人等とは、どのような法人をいうのか

Q 商人に該当する一般社団法人等とは、どのような法人をいうのか
 本誌563号8頁に掲載されている法務省民亊局吉野局付検事の解説に「①事業譲渡の当事者のうち、譲渡人が商人(商人である一般社団法人等を含む)であり、譲受人が商人である一般社団法人等である場合(商法17条2項)及び②事業譲渡の当事者のうち、譲渡人が会社(会社法2条1号)であり、譲受人が商人である一般社団法人等である場合(会社法24条1号)には、当該事業の譲受人である商人である一般社団法人等については、名称譲渡人の債務に関する免責の登記をすることができる(登記規則3条、商業登記規則53条1項参照)。」とありますが、一般社団法人又は一般財団法人の中に、商人に該当するものがあるということは考えてもみませんでした。一体、「商人である一般社団法人又は一般財団法人」とは、どのような一般社団法人又は一般財団法人をいうのでしょうか。

  一般社団法人又は一般財団法人(以下「一般社団法人等」という)が営む事業について制限はありませんので、「商人である一般社団法人又は一般財団法人」とは、一般社団法人等のうち、次のいずれかに該当する一般社団法人等をいうものと考えます(商法4条)。
1. 自己の名をもって商行為(商法501条、502条)をすることを業とする一般社団法人等
2. 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする一般社団法人等
3. 鉱業を営む一般社団法人等

【解説】

1. 一般社団法人等 一般社団法人等は、平成20年12月1日、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法人法」という)の施行に伴い創設された新しい法人制度です。改正前の民法34条の規定により設立された社団法人又は財団法人(以下「旧社団法人等」という)は、主務官庁の許可によって法人格を取得し(許可の要件は、「公益を目的とし、かつ営利を目的としない」こと)、登記は対抗要件にすぎなかったのに対し、法人法は、法人の設立に伴う主務官庁の許可主義を廃止し、剰余金の分配を目的としない社団又は財団について、公益目的の有無にかかわらず、定款の認証と登記によって法人格を取得することができる一般的な法人制度を創設しました。いわゆる「準則主義」の採用で、これが新しい法人制度である一般社団法人等です。

2. 一般社団法人等の営む事業 旧社団法人等については、公益目的事業を営むことが要件とされていましたが、一般社団法人等については、剰余金の分配をすることができないという制限はありますが、営む事業について制限はありません(もちろん、強行法規や公序良俗に反する事業を営むことはできません)。したがって、一般社団法人等は、公益事業、共益事業(法人の構成員である社員の共通の利益を図ることを目的とする事業)又は収益事業(利益をあげることを目的とする事業)のいずれも営むことができます。つまり、一般社団法人等は、ボランテイア活動から収益事業まで営むことができるというわけです。

3. 商人 商法4条は、商人の定義を「商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。」と規定し、法人法9条は、商法4条及び商行為を規定する商法501条及び502条の規定を準用しています。

 そこで、次に、一般社団法人等が商人に該当するか否かについて検討します。

4. 商人に該当する一般社団法人等 前述のように一般社団法人等は収益事業を営むことができます。そこで、この場合に、一般社団法人等の営む収益事業が、商法4条に規定する行為、すなわち、①商法501条各号に掲げる行為(絶対的商行為)、②商法502条各号に掲げる行為(営業としてするときに限る。営業的商行為)、③店舗その他これに類似する設備によって物品の販売をすることを業とする行為、④鉱業を営む行為のいずれかに該当する場合には、当該一般社団法人等は、商人ということになります。

 なお、会社の場合は、会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は商行為とされています(会社法5条)が、一般社団法人等の行為等については、このような規定はありません。

(担当 商業法人登記総合研究5人委員会委員 神崎 満治郎)