やさしい商業登記教室 第46回 理事長の変更登記の添付書面

Q 理事長の変更登記の添付書面
 医療法人の理事長の就任登記の申請書に添付する医師又は歯科医師(以下、「医師等」といいます。)であることを証する書面(以下、「資格証明書」といいます。)とは具体的には何ですか。


 資格証明書として、理事長が医師等である場合には、医師等免許証の写しを添付します。

 都道府県知事の認可に基づき医師等でない者が理事長に就任する場合には、当該認可書を添付します(平15.4.22民商1223号商事課長通知)。

【解説】

1. 資格証明書の添付の必要性
 医療法人の理事長は、都道府県知事の認可がある場合を除いて、医師等でなければなりませんので(医療法46条の3第1項)、理事長の就任登記には医師等であること証する資格証明書を添付します。重任の場合にも、あらためて資格証明書の添付が必要であるかということですが、重任時に医師等の資格を有していることを確認する意味で添付します。これは株式会社における会計監査人の重任登記の際にもその資格証明書(商業登記法54条2項2号・3号)を添付しなければならないということと同じ趣旨です。

2. 添付する資格証明書
 資格証明書としての医師等免許証は、あくまで写しを添付すれば足り、原本の提示等は不要です。実務の現場では、単に医師等免許証のコピーで足りるとする法務局と、株式会社の設立等の場面で、預金通帳のコピーを合綴する払込みがあったことを証する書面に代表取締役が押印し、証明するのと同様に、理事長による証明を求める法務局とがあるようですので、留意ください。

3. 理事長の変更登記の添付書面
 理事長の就任登記の申請書には、代理権限を証する書面(組合等登記令25条/商業登記法18条準用)と資格証明書のほか、おおむね以下の書面を添付します(組合等登記令17条1項)。ちなみに組合等登記令17条1項では、「その事項の変更を証する書面を添付しなければならない。」とあるのみで、商業登記法のような添付書面についての具体的な規定はありません。

 ① 定款
 理事長の前提資格となる理事及び理事長が定款所定の方法にしたがい選任等されたことを証するために定款を添付します。

 ② 理事の選任を証する書面
 定款の定めに基づく理事の選任機関による選任を証する書面を添付します。一般的には社員総会議事録がこれにあたります。

 ③ 理事長の選定を証する書面
 定款の定めに基づく理事長の選定機関による選定を証する書面を添付します。一般的には理事会議事録がこれにあたります。

 ④ 就任を承諾したことを証する書面
 法人と理事長とは委任関係にあることから、被選定者が就任を承諾したことを証する書面を添付します。理事会等の席上で被選定者が就任を承諾し、その旨が議事録等の記載から明らかであれば、その記載を援用することができます。

 理事長の就任を承諾したことを証する書面に押印された印鑑については、会社の場合と異なり、印鑑証明書の添付は要しません(各種法人登記規則5条における商業登記規則61条2項・3項の非準用)。

 なお、実務上、理事長の前提資格となる理事の就任を承諾したことを証する書面の添付を要しないとされる場合もあるようですが、「② 理事の選任を証する書面」を添付することを踏まえますと、理事の就任を承諾したことを証する書面を添付することが相当であると考えます。

 ⑤ 印鑑証明書
 会社の場合と同様に、原則として理事長を選定した理事会議事録等には、理事会等に出席した理事の、いわゆる個人の実印を押印し、印鑑証明書を添付します。但し、変更前の理事長が当該議事録等に法務局への届出印を押印した場合には、印鑑証明書の添付は要しません(各種法人等登記規則5条/商業登記規則61条4項準用)。

 ⑥ 退任を証する書面
 前理事長の退任を証する書面として、辞任届、死亡届や理事の任期満了退任に伴う資格喪失の場合には定款、又はその旨の記載ある社員総会議事録等を添付します。

(担当 商業法人登記総合研究5人委員会委員 司法書士法人鈴木事務所 司法書士 鈴木龍介)

※ 本問は、「登記情報」571号29頁以下にも掲載されています。