商業登記漫歩 平成19年4月16日号(23号)

◇ 4月14日(土)、第1回「司法書士・商業登記スペシャリスト養成塾」(後援・日本司法書士会連合会)を、開講しました。場所は、東京都千代田区神田神保町の(株)中央経済社講堂。期間は4月から翌年の3月まで、8月および12月を除く毎月第2土曜日の13時から17時50分までで、90分授業を3コマ計30コマ行います。
  初日の14日は、日本司法書士会連合会中村会長御臨席のもとに開講式を行い、第1限目は、日本公証人連合会会長筧康生先生(専修大学法科大学院教授を兼任)の「定款認証実務から見た司法書士への期待」、第2限目が法務省民事局商事課長相澤哲先生の「会社登記実務から見た会社法の諸論点」、第3限目が中央大学法科大学院教授野村修也先生(森・濱田松本法律事務所客員弁護士)の新会社法とコーポレート・ファイナンス「株式の多様化とその制約原理」と、タイムリーなテーマに講師は当代随一の豪華メンバーです。受講者全員、各講師の熱演に“納得と満足”、“感激と感嘆”の270分でした。

◇ ご多用の中、しかも土曜日にもかかわらず快くご出講いただいた講師の先生に、衷心より感謝申し上げます。

◇ ところで、そもそも商業登記の専門家である司法書士を対象に、今、何故、「商業登記スペシャリスト養成塾」を開講したのか。それは、旧商法とまったく異なった発想で制定された会社法(規制緩和・自己責任、すなわち登記官による厳しい事前チェックから必要最小限度の事前チェックと司法による事後チェックへの、登記行政の質的転換)に対し、特に、以下の点について、正しい認識を持ち、司法書士として的確な対応をしていただく必要があると考えたからです。

1.企業の経済活動を支えるインフラである会社法を、特に中小企業(約320万社といわれる会社の99%は中小企業であり、会社法も、まず中小企業について規定している。)に対して伝導する役割を担うのは司法書士である。
 加えて、司法書士は登記申請の代理を通して、会社法を執行する役割も担うことになる。

2.会社法では、企業運営の選択肢が大幅に増加したが、それはすべて自己責任であるので、企業をサポートする司法書士の役割と責任の増大について認識する必要がある。

3.定款自治の拡大に伴い、何を定款に盛り込むか、盛り込まないか、盛り込むとすればその規定の仕方と登記をどうするか等、司法書士の出番の増大について、その対応策を準備しておく必要がある。

4.類似商号登記規制の撤廃と会社法8条問題、会社の目的の具体性に関する要件の撤廃等と商業登記のあり方の変質について、正しく認識し、予防司法の観点から対応する必要がある。

5.旧商法時代は、登記が完了することによって司法書士の責任は終了したが、会社法のもとにおいては、登記が完了しても、原則として司法書士は免責されない。

◇ なお、次回期日は5月12日(土)、第1限目「電子定款の作り方と認証の受け方」、第2限目「新・会社法と商業登記実務上の諸問題」、第3限目「商業登記のオンライン申請」です。(満)