商業登記漫歩 平成20年4月14日号(30号)

◇ 4月12日(土)、「司法書士・商業登記スペシャリスト養成塾(第2期生)」がスタートしました。当商業登記倶楽部の目的は、「商業登記をベースとする司法書士の商事法務の実践」をサポートすることですが、昨年法務省から、現在全国に489庁ある商業登記所を80庁にする計画が発表されました。この計画が達成されますと(オンライン申請の進捗状況、郵送申請が可能であること等から判断して100%達成されるものと考えます。)、東京・大阪等の大都市を除き、商業登記所は本局のみとなります。そこで、今回の商業登記スペシャリスト養成塾は、全国商業登記所80庁時代において、会社法と商業登記について指導者的役割を果たすスペシャリストの養成を目標にスタートしました。

◇ 開講初日は、まず下川会長の格調高い挨拶で始まり、第1限目は佐藤純通日司連会長の「企業法務における登記実務・オンライン申請の利活用」と題する特別講義、第2限目は相澤哲法務省民事局商事課長の「商業・法人登記の現状と課題」、第3限目は野村修也中央大学法科大学院教授の「株式の多様化とその制約原理」と斯界第一人者による特別講義でした。これらの講義を理解できた受講者は、開講初日で前期受講料の元は取れたものと思います。

◇ まず、佐藤会長からは、司法書士をとりまく最新の情勢の紹介があり、相澤課長からは、商業登記所80庁問題への対応、一般社団法人・財団法人の利用促進(今月中に登記手続に関する省令についてパブリックコメントに付す予定)等、野村教授からは会社法の学び方として、まず、会社法を俯瞰して会社法の全体(鳥瞰図)を頭に入れる必要性について有意義な講義がありましたが、下川会長(東証1部上場企業の社外監査役も務めています。)の挨拶と3人の講師の講義に共通する点は、登記申請の前提となる実体上の手続への関与の必要性です。特に、中小企業の商事法務の面倒を見るのは司法書士に課された職責であるとの認識で一致しており、これは、当職が常日頃から述べている「商業登記をベースとする司法書士の商事法務の実践」と同じであり、意を強くした次第です。

◇ 次に、相澤課長の講義のポイントのいくつかを紹介してみましょう。

1.会社法については、組織再編、新株予約権等を除き、大体論点は出尽くした。

2.中小企業のニーズに合った実体上のサービスの提供(企画、立案関係)に留意する必要がある。

3.特に、定款については十分工夫し、それを登記に反映させる必要がある。

4.商業登記所80庁は、各地に商業登記に堪能な司法書士がいることを前提としているので、このことに疑念をもたれ、雑音の入る余地のないようにする必要がある。

5.一般社団法人は、社員の持分に関する規律がない点を除けば会社と同じであり、使い勝手が良く税制上も有利であるので、会社が良いか一般社団法人が良いか、依頼者サイドから十分検討して依頼者のニーズに十分対応できるようにする必要がある。

◇ ところで、一般社団法人の利用促進については、当職が昨年から支部セミナー等で力説しているところであり、相澤課長と共通の認識であったことを嬉しく思います。この法人は、団塊の世代の熟年起業、主婦の起業、村おこし・町おこし等に最適の法人といえます。

◇ 最後になりましたが、商業登記スペシャリスト養成塾(第2期)がこうしてスタートできますのも、株式会社中央経済社の絶大なご理解とご支援、株式会社リーガルのご協力に負うところが大きく、両者の社長さんと中央経済社の露本法務編集部副編集長、和田編集次長、リーガルの大塚取締役営業統括部長に感謝申し上げます。(満)