やさしい商業登記教室 第35回 新・会社法と会社の事業目的


1.旧商法と会社の目的

 旧商法時代(平成18年4月30日以前)においては、会社の事業目的は、登記の実務においては、①適法で、かつ②営利性がなければならず、これを定款に記載するには③明確かつ④具体的に記載しなければならないとされていました。これは、旧商法のもとにおいては類似商号の登記禁止の制度があり、商号権の範囲が目的によって画されていたことから、登記官は、目的を出来得る限り具体的に記載するよう求める傾向にありました。そこで、目的が具体的か否かについて、登記官の見解と申請人の見解が対立することもままありましたが、会社法の制定により次のように変更されました。

2.会社法と会社の目的

 会社法のもとにおいては、類似商号の制度が廃止されたことから、登記官は目的の具体性については審査を要しないこととされました。したがって、「事業」、「営業」、「商業」、「商工業」、「製造業」、「サービス業」という事業目的の記載でも登記は可能となりました。しかし、「明確性」(目的の意味が理解できること。)の要件は依然残っており、単に「事業」という目的では、許認可事業の場合には許認可に支障が生じると思われますし、また銀行取引においても、具体的な事業内容を聞かれると思いますので、事業目的はある程度具体的に記載した方がよいといえます。ただし、旧商法当時のように心配する必要はありません。