商業登記漫歩 平成17年3月14日号(18号)

◇ 3月11日(金)、ニッポン放送の新株予約権発行の差し止めを求めるライブドアの仮処分申請に対する決定が、遂になされました。
 主文は、「ニッポン放送が平成17年2月23日の取締役会決議に基づいて現に手続中の新株予約権4,720個の発行を仮に差し止める。」というものです。

◇ この問題は、商法という土俵の上でくり広げられたいわば現代の国盗物語で、東京地方裁判所は、次のように判断しています。

1.有利発行について
 本件新株予約権の発行が「特ニ有利ナル条件」による発行にあたるまでいうことはできない。
2.不公正発行か
 本件新株予約権の発行は、フジサンケイグループに属する経営陣による支配権の維持を目的とするものであり、なお現経営陣の支配権を維持することを主たる目的とするものというべきである。
3.企業価値の毀損のおそれについて
 ライブドアの支配権取得により債務者の企業価値が著しく毀損されることが明らかであるということはできない。
4.ライブドアの証券取引法違反(立会外取引)について
 証券取引法27条の2に違反するものということはできない。
5.放送の公共性について
 ライブドアがニッポン放送の支配権を取得しても放送の公共性が失われると認めることはできない。
6.名義書換の拒絶について
 ニッポン放送が名義書換を拒絶できる理由は特に存在しない。

◇ ところで、ニッポン放送は、以上の決定に対し、即日、異議申立てをしましたので、今後は東京地方裁判所の他の裁判長の下で更に審理されることになります。

◇ これは結果論ですが、もし、①TOB価額を切り上げ、②新株予約権の発行をもっと少なくしていたら、結論は違ったものになっていたのではないかという気もしますが、さて、これは、神のみぞ知る、いや神も知らないことでしょう。(満)